なぜ栄養士は「バランス良く」ばっかり言うのか
この記事でわかること!
    • 栄養士が「バランス良く」ばっかり言う理由!
    • 栄養士の役割は「ヘルスプロモーション」を広めること!

私が管理栄養士として病院に勤めていたころ、糖尿病の患者様に言われたショックな言葉があります。

栄養士はみーんな『バランス良く』ばっかり。
好きなものを食べさせてくれない。
病院食も物足りない。
医者は薬を処方してくれるけど、栄養士は奪ってばっかりね。

その頃の私は栄養指導2ヶ月目のひよっ子で、まさかこんなハードな言われようをされるとは思ってもいませんでした。

栄養士 ちびうし
ショックすぎて、この後の会話は覚えいてない・・・
きっと、彼女が納得できる回答を、当時の私は持ち合わせていなかったはず・・・

 

多くの方にご理解いただきたいのが、病院での栄養管理・栄養指導は、治療の一環であるということ。

そもそも薬は自然治癒力を高めるものだし、万全なコンディションで治療を受けるためにも、適切な食事の指導は必要なのです。

 

もちろん、彼女にこんな事を言わせてしまったのは、当時の私のひよっ子栄養指導に問題があったのだと思います。

 

マニュアル通りに「〇〇は控えましょう」とか「▲▲は積極的に食べましょう」とか、一方的に話してしまったのも原因の1つです。信頼関係もなにもなかったのでしょう。

 

今回は、過去の自分の失敗をリベンジするために記事を書いてます。栄養士が「バランス良く」ばっかり言う理由を、少しでもご理解いただけたらと思います。

栄養士が「バランス良く」ばっかり言う3つの理由

猫のクエスチョン

「ポパイのほうれん草」は現実世界にないから

ポパイのイラスト

こちらのキャラをご存知でしょうか?アメリカンアニメの「ポパイ」です!

ほうれん草を食べると超人的なパワーを出すことができるというキャラ設定。日本のアニメやゲームにも見かける設定ですよね。

ドラゴンボールの仙豆
1粒食べれば10日は飢えをしのげる

ラッキーマンの変身用ラッキョウ
食べればヒーローになれる

サイコパスのハイパーオーツ
これさえあれば、どんな料理にも加工できる

上のアニメを見たことある人はイメージできたかな?

つまり、何が言いたいかというと…

栄養士 ちびうし
「これさえ食べていれば〇〇なれる!」という食べ物はこの世にない!

 

〇〇には、健康に・キレイに・強く・かっこよく…いろいろな言葉が当てはめられます。

 

ヒトは食事から栄養素を身体に取り入れることで、エネルギーをつくりだしたり、身体を構成したりしてます。

食事はヒトの生命を支える、燃料であり材料です。

燃料や材料の過不足が続けば、やがて生命活動に悪い影響が出始めます。

その悪い影響の代表例が、高血圧や糖尿病などの生活習慣病なのです!

 

そういった誤った食生活を、少しでも改善できるようにサポートするのが病院の栄養指導。

 

サポートと表現したのは、あくまでも食行動は自分で選択するものだから。

その選択する力を養うためのコーチ兼サポーターが管理栄養士だと私は思っています。

栄養素は互いにかかわり合いながら生命を営むから

出典:浜乙女 食育への取り組み

小学生の家庭科(総合?)の授業で、「3色の食品群」ってやりませんでしたか?

食品に含まれる栄養素の特徴ごとに赤・黄・緑に色分けして、それぞれバランス良く食べましょうね~ってやつです。

それぞれの栄養素の役割をざっくり分けると下の表のようになります。

体をつくる たんぱく質・脂質・ミネラル
体の調子を整える ミネラル・ビタミン・たんぱく質
エネルギーになる 炭水化物・脂質・たんぱく質

 

私たちの体は「食べたもの」からつくられていますが、「食べたもの」がそのまま体になるわけではありません。

消化活動により細かく分解されて、はじめて吸収できるカタチになるのです。

 

例えば、肉などのたんぱく質は何段階にも分けて消化されて、最終的にアミノ酸となり、小腸粘膜から吸収されます。

吸収されたアミノ酸は、血流にのって肝臓に運ばれます。

出典:お肉のことならなんでもわかる!食肉なんでも大図鑑

この消化活動で欠かせないのが「酵素」の存在です。

酵素にはさまざまな種類があり、図中のペプシンたんぱく質専門の分解酵素です。ちなみに「酵素」自体はたんぱく質からできています。

で、大切なのはここからです。

 

栄養士 ちびうし
酵素は、補酵素がいないと働くことができないんだ!!!

 

めっちゃ補酵素に依存してます。
会いたくて会いたくて震えています。(←古いw)

 

酵素と補酵素の関係は、よく「カギと鍵穴」と表現されます。

特定の酵素には、特定の補酵素が必要で、どちらかが欠けると全く意味のない存在になってしまうのです。

 

そのため、補酵素はスムーズな代謝活動(栄養素の分解や合成)の絶対条件と言っても過言ではないでしょう。

そして、この補酵素として働く栄養素がビタミン・ミネラルです。

 

ビタミン・ミネラルが不足すれば代謝活動は滞り、疲れやすい・むくみやすいなどの体の不調へとつながります。

他にも、栄養素の相互作用はたくさんあります。

栄養素の相互作用
    • ビタミンCは鉄の吸収率を上げる
    • ビタミンDはカルシウムの吸収率を上げる
    • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は油で吸収率が上がる など

短い栄養指導の時間で、これらを全部伝えるのは難しいですし、相手も疲れてしまいます。

 

なので、簡潔に結論を言うと「バランス良く」になってしまうのです…

 

食生活は継承されていくから

カトラリー

これが一番大事だと私は思っています。

自分の食生活は、自分だけでなく周りにも影響を与えるからです。

 

「おふくろの味」って人それぞれ違いますよね?肉じゃがの人もいれば、カレーライスの人もいます。

 

食事のスタイルも家庭によって違います。みんなで大皿料理を取り分けるスタイルもあれば、1人1人に盛り付けるスタイルもあります。

 

ぶっちゃけ、食事の仕方は絶対コレっ!ていう答えは、私はないと思ってます。

 

あなたが心身ともに生涯健康でいれたなら、きっとあなたの生活スタイルは、あなたに丁度よかったんだと思います。

 

身体は生活の結果ですからね。(先天性の病気・感染症・ガンとかは違うけど…)

 

しかし、悪い結果が出てしまってからでは大変だから、治療だけでなく予防の意味も込めて「バランス良く」って伝えています。

 

病気が悪化すれば「食べてはいけないもの」が出てきてしまいます。

 

食事の楽しみを減らさないためにも、栄養士は「上手な食事との付き合い方」を伝えているんですよね。

3色ピーマン

健康・栄養に関する膨大な研究結果から

「こうするといい結果でてるよね」
「こうすると悪い結果になりがちだよね」

という、歴代の研究者の導き出した結果・結論をインプットして、専門家の立場から世間にアウトプットしていくのが、栄養士・管理栄養士の務めだと私は思っています。

 

アウトプットの方法は、栄養指導や食育の授業のようなわかりやすいものだけではありません。

日々の献立食事そのものも栄養教育の一環です。

 

対象者にとって前者が座学なら、後者は実技みたいなもの。

 

「どんな食材をどのくらい食べるのか」を目で学び、「どんな味(味加減)か」を実際の食事を通して学んでもらうために、栄養士・管理栄養士は頭をひねらせて献立を立てています。

 

「太りやすい」「痩せやすい」は、もちろん遺伝の影響もあります。

しかし、生活習慣に何かしらの問題が隠れているパターンの方が圧倒的に多いと言われているのも事実です。

だからこそ、身体に悪い影響が出てしまった食生活は気づいた時点で修正しないと、後世にまでも影響を与えかねません。

栄養士・管理栄養士の役割とは

レモンスライス

栄養士・管理栄養士には多種多様の働き方があります。

栄養士・管理栄養士の働き方
    • 学校・病院・福祉施設での栄養管理
    • メーカーでの商品開発
    • 勉強会やセミナーでの講師
    • 栄養関連アプリの開発 など

職場によって仕事内容は異なりますが、栄養士・管理栄養士の役割を一言でいうと「ヘルスプロモーションを広めること」だと思います。

 

ヘルスプロモーションとは?

ヘルスプロモーションとは、世界保健機関によって「人々が自らの健康とその決定要因をコントロールし改善できるようにするプロセス」と定義されています。このプロセスを進めていくためには、健康教育によって「知識、価値観,スキルなどの資質や能力」を身につけることが重要です。

出典:日本健康教育学会

のらねこ
・・・よくわからん。

 

つまり、私なりの解釈を簡単にまとめるとこんな感じです↓

 

  1. 専門家たちが「自分の健康を自分でコントロールするための手段」を人に伝える
  2. 専門家の指導を受けた人たちが「自らの意思で健康維持につながる行動がとれるようになる」
  3. 専門家の指導を受けた人たちが「その知識を周りの人に拡散していく」
  4. みんなが自分自身の健康をコントロールできるようになる!

 

お昼に魚料理食べたから、夜は肉料理にしよう

お弁当に野菜が少ないから、野菜ジュースを飲もう

昨日食べ過ぎたから、今日は控えめにしよう

 

この思考回路こそ、ヘルスプロモーションの賜物だと私は思っています!

 

栄養士・管理栄養士は「献立考えたり調理したりする人」ってイメージ強いけど、それは単なる表面的な部分であって、その根幹は知識のアウトプットだと思います。

 

献立・料理・商品・言葉、あらゆる手段で栄養に関する知識を提供するのが、栄養士の使命かなって思ってます。

まとめ

栄養士が「バランス良く」ばっかり言うのは、本当にそれしか言いようがないから!

ここまでつらつらと書いてきましたが、あくまでも個人としての意見です。

全ての栄養士・管理栄養士の方々が、私と同じ考えとは限りません。

(もし、この記事を読んで気分を害した栄養士・管理栄養士の方がいましたら、ごめんなさい。)

 

私も管理栄養士の1人として、このブログを通してヘルスプロモーションを広げていけたらと思っています。